長野県安曇野市穂高1692

　その昔、全国統一を目指した大和朝廷が、信濃の国を足がかりに東北侵略を進めていました。
　この地の住民達は、朝廷軍に沢山の貢物(みつぎもの)や無理難題を押し付けられて大変苦しんでいました。

　安曇野の里に住んでいた魏石鬼八面大王は、そんな住民を見るに見かけてたちあがり、坂上田村(さかのうえたむら)麻呂(まろ)の率いる軍と戦い続けました。
　多勢を相手に引けをとることなく戦った大王でしたが、山鳥の尾羽で作った矢に当たり、とうとう倒れてしまいました。

　大王があまりにも強かったため、息を吹き返すことを恐れた朝廷軍は、大王の体をいくつかの場所に分けて埋めました。
　胴体が埋められていたという塚が農場の中にあったことから、この地は大王農場と名づけら、その塚は後に大王神社として祭られています。
　魏石鬼八面大王は、大王農場の守護神でもあり、安曇野を守ってくれた勇士でもあります。
大王の強靭(きょうじん)でありながら、人を愛するあたたかな心は、ここを訪れた人々にきっと伝わっていくことでしょう。